~全量雄町蔵~御前酒 菩提元 にごり生原酒
―“全量雄町蔵”としての第一歩目。この冬も酒造りがはじまりました―
今年も9月中旬より酒造りがはじまりました。
いよいよ令和4酒造年度もって御前酒は、「全量雄町蔵」になります。
特定名称に限らず、地元のパック酒までが雄町での製造になる蔵は全国で唯一、御前酒だけです。
加えて菩提酛仕込みの比率は約60%にまで達する見込みです。
お盆明けから過去に前例のないほどの量の「そやし水」の製造が続きました。
新たな製造にも取り組んでまいります。どうぞこの冬の御前酒にご期待いただけましたら幸いです。
最初の仕込みは例年通り、1980年代に全国で初めて菩提酛造りを復活させた故・原田巧杜氏の時代から続く「御前酒 菩提酛にごり」からはじまります。
かすかに滓を絡めたシルキーな口当たりのなかに、雄町・菩提酛の立体的かつ多層的な味わいを明快に感じていただけるかと思います。
狂うほどに雄町と菩提酛を追求するからこそ、できた酒の美しさは耽美的(たんびてき)になり得るような気がしています。
単純に「美味しい」と言っていただけたら十分なのですが、皆様の口に入る時、その先の価値も感じていただけるような酒であれたらと願っています。
(蔵元コメント)
商品情報
原材料 | 雄町(岡山県)65% |
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アルコール度数 | 17度(原酒) |
日本酒度 | -6.0(やや甘口) |
酸度 | 2.20 |
使用酵母 | 協会9号 |
仕込水 | 一級河川「旭川」の地下伏流水 |
取り扱い・保存について | 冷暗所【10℃以下で保管】 |
味わい・特徴
一般的などろっとしたにごり酒とは違う、フレッシュな新酒の風味とにごり特有のまったり感の同居した食事にも合わせやすいにごり酒を求め、商品開発を行いました。酒母仕込み方法は、その昔、奈良の菩提山正暦寺から始まったと言われる「菩提山酒」の仕込み方法「菩提もと造り」。天然乳酸をたっぷり含んだ「そやし水」をもとにして仕込む方法で、酸味があり、キリッとした味わいになります。新酒の頃はフレッシュさが先行し、やや辛口に感じる事もあります。熟成と共にコクと甘味が増し、腰があり深みのある味わいへと変化してきます。ラベルは「版画寺」として有名な地元・毎来寺住職 岩垣正道師作です。(蔵元サイトより)
飲み方・料理の合わせ方
冷やしてお飲みいただくか、常温もおススメです。
お食事は、グラタン、鱈の白子ポン酢、平目の刺身等と合わせてお楽しみください。
株式会社 辻本店(岡山県真庭市)
文化元年(1804年)、現在地に酒造業を創業。
当時は美作勝山藩御用達の献上酒として「御膳酒」の銘(現在の銘柄の由来)を受け、一般には「萬悦(まんえつ)」の銘柄で親しまれていました。
又、当蔵元は古来「うまさけの国」と言われたこの「美作(みまさか)」の地(岡山県北の旧国名)で、寒冷な気候、良質の酒米と水という、酒造りの好条件に恵まれた環境にあります。このことは、当蔵の基本方針にも表れています。
長い歴史の中、地元の米、地元の水、そして地元の技で醸すことこそ、造り酒屋の原点と考え、綿々と酒造りに励んでいます。
酒質の特徴としては、県南の瀬戸内の酒が甘口であるのに対して、すっきりとした辛口が持ち味です。それは、冬の寒さの厳しいこの地の人々が求めた味でもあります。また、早くから(昭和45年頃)純米酒の製造にも積極的に取り組み、現在では製造数量の7割を占めています。
また、当蔵で40余年の熟練者であった前杜氏の原田 巧の後を引き継ぎ、平成19年より岡山県初の女性杜氏 辻 麻衣子が酒造りを行っています。蔵人も若返り、杜氏を盛り立てています。
当蔵元の辻家では、明治から昭和にかけての当主が、文化的な活動にも積極性であり、自ら書画を嗜むことから、文人墨客の訪れることが多く、与謝野鉄幹、晶子夫妻の逗留をはじめ尾上紫舟、碧梧桐等が画帳、色紙に筆跡を残しています。また、旨酒をこよなく愛した明治の文豪、谷崎潤一郎は当地で「細雪」を執筆していたことは、意外にも知られていません。
彼の逗留していた町屋も現存しています。歴史学者である奈良本辰也を始め、池田弥三郎、その他にも渥美 清、永 六輔等、多くの客人が訪れています。酒を通したさまざまな文化とのふれあい、こうした御前酒の歴史は、上質の酒造りの伝承と本物へのこだわりであり、次代の酒文化の担い手としての心意気を示すものに他ならないのです。